夢から醒めても続いていくこれから / LAMP IN TERREN

2021/12/28、LAMP IN TERRENとして行われる最後のライブ。

 

会場に向かう新幹線の中で、自分の日記代わりになっている昔のツイートを遡って見ていたら、mol-74の武市さんのこんな呟きをリツイートしていた。

ほんとうにこれに尽きる。

 

今回のライブは"A Dream of Dreams"、"夢から醒めた夢"をタイトルに掲げたもの。

わたしは、夢が、奇跡が、ひとつ終わりを迎えるその瞬間に立ち会うために足を運んだのだ。そして、また新たな奇跡を生み出そうと踏み出す彼らの門出を祝福するために。

 

前日の配信で大さんが「しんみりしてほしくない」と言っていたのを聞いてて、そんな無茶な…と思って参加したが、実際しんみりする気持ちよりも満足感の方が圧倒的に大きくて、どうだった?と聞かれたら大声で「楽しかった!!」と手放しで言える。

もちろん淋しさはある。無いわけがない。それでもやっぱり、満たされた気持ちの方が勝るのだ。

 

そういう感想になったのは、セトリの構成が大きく影響したと思う。

手を上げたり手拍子したりして観客が参加しやすい選曲がされているのに加えて、曲を光/闇、白/黒に二分化したとすると、光・白の属性にあたる曲が選ばれているように感じた。人との繋がりとか、前に踏み出すことがテーマの曲たちというか。

単純に盛り上がりという点だけなら、よくライブでやっているほむらの果てとか凡人ダグが入ってもおかしくないような前半の流れだった。でも入っていなかったのは、そういう選び方なのかなと思ったり。

あとは懐古的に昔の曲が多くなったりしていなかったのも一因かもしれない。緑閃光をやらなかったのが「あれは"かつての"代表作だよ」という自信の表れなんだとしたら、ものすごく良いなと思う。最新のものがいちばんの自信作というのは前に進んでいることの証だから。

 

全体としてはそんな感じで、あとは備忘的に雑感を。

状況が状況だからか、過去のことが重なって思い出される瞬間がしばしばあって、これまでにない体験をしたライブでもあった。

 

01.いつものこと

ラストの歌詞を「きっとねいつか未来でまた笑って思い出せる」にアレンジしてたのはほんとにずるいし、「それが僕の全てだった」って過去形になってたのも地味に効いた。あんなのぶっ刺さるに決まってる。

02.地球儀

セトリに入るのは確実だと思ってたけど、2曲めは完全に予想外。ただ、この後の流れを知って振り返ると、この凄まじいテンポで走りだす火付け役はこの曲以外有り得ないなっていう納得感がすごかった。この曲は様々な会場でジャンプしたよね。

03.キャラバン

地球儀で息が上がってるところに投げ込まれて、ボルテージの上がるまま煽る声に合わせて拳を突き上げた。”バンド”がテーマにある曲というイメージがあるので、最後に4人の演奏を聴けてよかった。ラスサビ前の全部の楽器が対等に絡み合う感じが好き。

04.オーバーフロー

こんなご時勢じゃなかったら、全力でシンガロングしたかった!! 観客みんなが全力でステージに向けて手を伸ばした曲なんじゃないかと思う。大きな声を出せない分、全部この手から伝われ、って思ってた。

MC

大喜さんの脱退はびっくりしたけど、その後の「それならLAMP IN TERRENは終了する」という流れには全く違和感がなかった。むしろ、しれっと代わりに新しいドラムが加入して続いた方がショックだったかもしれないとさえ思う。MCのときに顕著に見える、あの長年の友達同士という下地がある関係性がテレンだという感覚だから。公式のインタビューにあった「一番根幹にあったのがメンバーと一緒に過ごしてきた記憶」というのが見てる側にも伝わってたんだと思う。

05.Dreams

多分やるだろうとは予想してたけど、やってくれて心底嬉しくて、前奏を聴いたとき、ぱあっと胸が躍った。近年のしんどかった時期をいちばん共にしてくれた曲だ。何回この曲をリピートして、何回「僕らは嵐に飛び込んでいく 今も輝いて心を呼ぶ光の方へ」の歌詞に救われたか分からない。

06.at (liberty)

予想外だった曲その1。繋ぎでこの曲が来るって分かった瞬間、息が止まりそうになった。めちゃくちゃ好きな曲なのに、片手で収まるくらいの回数しかライブで聴けてなかったので。たしかこの辺りで「未来の方を向いたセトリ」ってそういうことか、と思ったはず。

07.ホワイトライクミー

Bloodツアーのときにこの曲に見た”光”の印象があまりにも鮮烈で、いまだにライブで聴くたびにそのときの発光を追体験している気がする。サビまでの溜めが長めなのがめちゃくちゃ効いてて、一気にさあっと光が拡散していく感じ。

08.New Clothes

何回聴いても毎回新鮮に格好良くてびびる。「今が正しい未来」と言い切る歌詞が大好きで、”正しい道というものがあるのではなく、自分の行動で選んだ道を正しいものにしていく”という元上司にもらった言葉を思い出す。

09.Water Lily

リスナーに向けて歌われている感触が強く感じられて、ライブで聴くたびにどんどん好きになっていった曲のひとつ。間奏のギターが透き通って美しくて聴き惚れる。最後のロングトーンがめちゃくちゃきれいだった。

10.ベランダ

大事に思ってても上手くいかない関係性とかタイミングってあるよな…と切なくなる。これは穿ちすぎかもしれないけど、個人的にはこの日は大喜さんに対しての思いが混じってるように感じた。ラストの高音と地声の切り替えがたまらなく好き。

MC

大喜さんが挨拶で、メンバーに出会い、メジャーデビューし、大舞台に立っていることを「有り得ないこと」だと言っていて、冒頭に書いていたバンドというものの奇跡の話だなあと思っていた。彼らが出会って、バンドを組んで、曲をリリースして、一方でリスナーがその音楽に出会って好きになって、たまたま同時代に生きていて、そのライブに来ているって、改めて考えてみるとすごい巡り合わせだ。

湿っぽいのはいやだから、と普段と変わらないようなやり取りをしていたけど、「お前やっぱ俺とバンドやっといた方がいいんじゃないの?」という冗談交じりの言葉に、それでも一滴の本音が混じっている気がして、ぐ、ってなったし、その後の「ばかっっ!」って叫びも、そんなので入るBABY STEPある??って笑いつつも、胸が詰まった。

11.BABY STEP

ドラムを中心に陣形を描いて曲に入るあの後ろ姿が好きだ。同期の淡い色の音が広がってからの、だん、と音の束が身体にぶつかってくる入りの力強さが好きだ。扉をひらくような開放感のある最後のコーラスの伸びが好きだ。言わずもがな歌詞が最高だ。この曲に出会えたことが自分のターニングポイントだった感ある。

12.林檎の理

予想外だった曲その2。これもほんとうに嬉しかった。テレンに最初に会ったのが”LIFE PROBE"だったから、その収録曲たちには特に思い入れがある。セトリの常連という感じではないからこそ、イントロで分かった瞬間の高鳴りが毎回やばい。意外と地球儀に次いで会場を湧かせる曲。

13.宇宙船六畳間号

やわらかく青い照明とゆったりしたテンポが相俟って、あれ、この曲ってこんなにもやさしくて美しかったっけ…?とぼんやり思いながら浮遊感に包まれた。語りかけられてる感が心地良い。「そう僕と君とで全てなんだ」の歌詞のときの大さんの表情、好きだった。

14.pellucid

曲名どおりに透明で澄んだ、テレンの中でいちばん繊細な手触りがする曲。なんとなく、しん、と冷えた空気が清浄な冬のイメージがある。いくら大切な人でも分かり合えないことの寂しさと、分かり合えないからこそ”分かりたい”と触れようとする温もり、その両方を感じる。

15.おなじない

バンドバージョン、ドラムが飛び跳ねてる感じで曲の可愛さが増してて好き。お気に入りの靴を履いたときの、どこまでも歩いていける心躍るような雰囲気。「僕は君と出会った 同じように見付けてくれた 君と未来に出会うために」の歌詞、この日に聴くと特別な意味を持って感じられた。

MC

終わりを意識してしまうからアンコールは無し、LAMP IN TERRENとしては確かに最後かもしれないけど、自分たちの人生は続いていくからそれを優先したい、と。

振り返ると、アンコール無しなのが残念に感じないくらい、ラスト3曲でストーリーが出来てて、きれいな締め方だった。

16.EYE

「見つめるべきはきっと僕じゃなくていい」の歌詞でぐっと伸ばされた大さんの腕が印象的だった。これも出来ればシンガロングしたかった。あの最後の声が重なり合うところ、ライブハウスでみんなで歌えたらすごいことになるんだろうなあ。いつかそんな日が来ればいいな。

17.I aroused

予想外だった曲その3。ここも、来た、と思った瞬間にテンションが上がると同時に、納得感が押し寄せてきた。この曲のイメージは、目を開いた先に未開拓な世界が果てしなく広がっている絵で、それがこのタイミングで演奏されることのエモさ。後々考えてみれば「目を覚ます」というフレーズが入っていて、まるで今回のライブタイトルに合うように作られた曲のようだと感じるくらいだ。

18.ニューワールド・ガイダンス

絶対ラストはこれしかないと思ってた。照明がばちばちに攻めてて、演出すげえ、ってなった。「それだけで僕は笑える 生きてゆける」という小さな歌詞変更がめちゃめちゃに刺さって、気付けば頭の中でリピート再生されている。

 

あとは思い出語りで、テレンとの個人的な転機を3つ。どれが欠けても、こんな長文を書くほどまでに好きにならなかったかもしれないと思うと、すべては巡りあわせだ。

2016年夏、Talking Rock Fesでテレンに出会った。メイとボイドが空に伸びていくように響いていたのを覚えている。好きだ、と思ってすぐに”LIFE PROBE”を手に入れて、繰り返し繰り返し聴いた。ただ、当時は他に推しバンドが居たこともあって、あくまで”きちんと追ってはいないけど好きなバンドのひとつ”くらいの立ち位置だった。

2018年春、活動休止の発表を見た。一度もワンマンに行かないまま、もし万が一復帰しないなんてことになったらいやだ、という思いで向かったMARCHツアーで”New Clothes”の虜になった。歌詞に心臓を的確に深く射抜かれたのに加えて、音楽がめちゃくちゃに格好良かった。復活したらちゃんと追おうと心に決めた。

2019年秋、Bloodツアー@京都。小さいキャパの会場で、なおかつ最前というこの上ない好条件でライブを体験する。聴覚だけで感じるのではなく、空間そのものに吞み込まれるような初めての感覚。この日で人生が変わったと言っても過言ではなくて、ぱあんと目の前がひらけたような気がしたのだ。「自分は自分のために生きていく」のだと降ってくるように理解した。あれから、とても息がしやすくなったように思う。

 

「望むまま。一度きりしかない人生だから、悔いの残らないよう楽しんで生きていこう」。

LAMP IN TERRENとして最後のステージに残された言葉はそのまま、私がテレンと出会って手に入れた生きていく指針そのものだった。

これまでと同じように、きっとこれからもテレンの音楽と一緒に歩いていく。「また会えるよ」というその言葉を信じて、いつかまた”Enchanté”する日を待っている。

一緒に生きていくこと / FRAGILE (LAMP IN TERREN)

※Progress Report京都公演のMCに関する記載を一部含みます※

 

公演前のインタビューでは「演劇のような観せるライブに」と語っていたが、

京都までの2会場でそれは無理だと気付いたらしい。

コロナ禍により”自粛”され、約10か月ぶりのワンマンライブ。

このときを待ち望んでいたファンの盛り上がりは、いくら落ち着いたセトリといえども止めようがない。

 

当初想定していた雰囲気と違うとぼやきながらも、そこまで熱望されていることに嬉しそうな表情を見せるメンバーに、こちらも温かい気持ちになる。

 

今回はアルバムのリリースツアーではないとはいえ、直前に発売されたばかりの「FRAGILE」がメインとなっている。

前作の「The Naked Blues」のときにも全曲語りをしたのだが、今回もやっていこうと思う。

(引用の歌詞は好きなフレーズで、必ずしもサビではないです)

atamanonaka.hateblo.jp

 


LAMP IN TERREN - FRAGILE (Album Trailer)

 

1. 宇宙船六畳間号

 たとえ君にとっての一部でも

気持ちと想像で君の形に触れるんだぜ

「FRAGILE」というアルバム自体が、コロナ禍という状況下だからこそ作られたものだというのはインタビューで語られているが、中でもこの曲にいちばんそれが色濃く表れていると思う。

 

生身で会うことができなくても、オンライン上に残されたあれこれやそこから想像することを通じて繋がっていけるという感覚は、程度の差はあれ現代人みんな持っているのではないかと思う。

たとえば私も、週に5日8時間以上を同じ場所で過ごす同僚よりも、毎日その呟きを眺めているタイムライン上でしか知らない人たちを身近に感じるのだ。

 

”そちらはいかがお過ごしですか”という呼びかけから始まる歌詞、そしてメンバーすら驚くような早い段階でデモがYouTubeにアップされたという経緯からも、リスナーへと向けられたまっすぐで温もりのある視線を感じる。

余談だが、このコロナ禍の期間中、弾き語りをしたり雑談したり料理したりとこれまで以上に配信をたくさんしてくれていたのも、ファン思いだなあと嬉しかった。


LAMP IN TERREN - 宇宙船六畳間号 (demo - Short ver.)

ふわふわとした漂うような音が心地良く、浮遊感の中そっと手を伸ばすようなイメージが浮かぶ。雰囲気ががらっと変わる間奏が好き。

 

2. Enchanté

正しくなくたっていい

心のままの君と空に落ちたい

タイトルは フランス語で”はじめまして”。

前になにかで「テレンのベースはもはやギター」みたいな話をしていたけど、この曲がそんな感じかなあと思う。メロディアスできれい。

空と風の印象が強いからだろうか、この曲から想像するのは”自由”という言葉だ。変化していくこと、可塑性があること。それが、何物にも縛られずに軽やかに飛んでいく”自由”なイメージに繋がっているのかもしれない。

 

身体の細胞は日々新しくなっていき、数年も経てばすべて入れ替わるなんていう話があるが、それと同じように心も日々移り変わっていく。

その変化の結果として、吹き飛ばされるように抗いがたく進んでいくにしろ、えいやっと自ら飛び込んでいくにしろ、自分でも思ってみなかったような世界に”はじめまして”することは、いつも不安と高揚を孕んでいる。

 

新たな世界へ踏み込んだ君はもう、以前の君ではないし、私にしてもそれは同じこと。

だから私たちは出会うたびに何度でも”はじめまして”を繰り返すのだ。


LAMP IN TERREN - Enchanté (Official Music Video)

迷いなく一色に染まった抜けるような青空ではなく、たくさんの白い雲が浮かんだ淡い空を背景にしたMVというのが曲の雰囲気に合っている。

 

3. ワーカホリック

でもたまにそんなときに限って

都合の良い幸福が降ってくんのよ

もうちょっとだけ耐えてみようって思わせやがる

サラリーマンの友人に向けて作った曲ということで、同じように会社員をやっている身としては嬉しい。ゆったりめの曲が多い今作の中ではアグレッシブな方で、ライブで腕を振り上げるのが気持ちよかった。

 

働きはじめてからまだ10年も経っていないけど、それでももう労働することに倦んでいる。異動して転職して周囲の環境が多少変化したとしても、週5日働いて2日休むというサイクルをこの先何十年も続けていくことは、意識してしまうと耐えがたく思えるから、そのことはなるべく考えないようにする。

 

ひどく起きるのがつらくてスヌーズを何度も作動させる朝、疲労感でいっぱいで眠るだけで終えてしまった休日の夜。何のためにこんなにがんばって働いてるんだろうって自問がふと頭をよぎる。

それでも、なんとか生き延びている。

引用した歌詞に心底共感するのだけど、ほんのたまに都合の良い瞬間に降ってくる幸福があるのだ。だから、もうちょっとだけ、もうちょっとだけ、と引き延ばせてしまう。多分これからも。

 

車のエンジンをかける音や目覚まし時計のベルといったSEが効果的に使われていて、臨場感、没入感を高めている。特に”大人にならなきゃ もう支度しなくちゃ 身嗜みは崩さす急いでいかなきゃ”という畳みかけるような歌詞のあとの溜息のリアルさがすごい。

 

4. EYE

汚れた自分が嫌いだった

慌てて洗った 自分さえも殺した

その姿で何が愛せるだろうか

今作のリード曲。


LAMP IN TERREN - EYE (Official Music Video)

外出自粛が謳われる中、”この機会に自分の内面に向き合いましょう”というようなムーブがあり、でもそんなことをしていたら自分の嫌なところばかり目について死にたくなってしまうと思った、という大さんのインタビューやMCにとても納得感があった。

 

自分の内面に向き合えば向き合うほど、このままではいけない、こんな自分のままではいけない、と窒息しそうになるその感覚が自分のものとして解る。

そうして自分に駄目だしをすることが成長につながるのだと信じて、その苦痛は耐えて乗り越えなければならないのだと思っていた20代半ばの頃の自分を思い出す。

 

今でもそう思っているところはどこかに残っていて、苦しくなるから内側に目をやることを避けているのを逃げだと感じることもある。

だから、”見つめるべきはきっと僕じゃなくていい 初めから他の誰でもない筈だから”と言われるとほっとする。

誰かの視線のフィルタを通して自分を見つめてジャッジするのじゃなくて、心のままに生きていきたい。

 

5. 風と船

もう隠そうとしないでよ

弱音ぐらい話せよ 同じ僕でしょ

そうして最後はこの手で優しく掬ってあげられますように

曲作りもメディアへの露出も自分ばかりだと独りな気持ちのときに作ってボツにしていたのを、その経緯を知らない他のメンバーたちが数年を経てアレンジして持ってきたというエモすぎるエピソードがある曲。

 

心を許していないからではなく、親しい相手にほど弱音を吐くことができないし知らないままでいてほしい。こうありたいと望む姿があるから、それにそぐわない自分の弱さを受け入れることができずに自分を責める。

単なる見栄だと言ってしまえばそれまでなのだが、自分を大きく見せたいがためではなく、疵を見えないように隠そうとする努力は果てしなく孤独で、より傷を深めるようにさえ感じる。

 

自分が自分の味方になることが自然にできなかった人間としては、引用した歌詞の包み込むような優しさに胸が撃ち抜かれる。

疲れきってどうしようもなくなったときに聴くと涙腺が崩壊すること間違いなし。

 

6. チョコレート

上手に嘘ついたらご褒美ひとつ

夢心地のままふたりでいよう

大さんの声の持つ色気が遺憾なく最大限に発揮された1曲。

これまでの曲の中でいちばん恋愛色を強く感じるが、タイトルからイメージする甘さよりも、どろりと溶けたビターなチョコレートに沈んでいくような感触が残る。

 

ここで描かれる”嘘”というのは、相手との間のものだけではなく、自分に対してつくものでもあるのだろう。恋は盲目といわれるが、都合の良い面しか見なかったり、いやな部分から目を背けたり、不安を感じながらも信じたりして、そういうのもある種の”嘘”だから。

何もかも本音で話し合って成立する関係なんて無いとは知っていても、嘘をつくことはうっすらと罪悪感をうんで疲弊させる。それでも嘘をつくのは、関係性が壊れないように壊れないようにという願いのひとつの形なのだろう。

 

 

7. ベランダ

ごめんね 傍に来て 傍に居て

個人的には今作でいちばんライブで化けた曲。

試聴会のときに「間奏で視点が空に昇っていく感じ」と言っていて、もちろん音源でもそれは分かるのだが、ライブではその光景がさらに鮮明に思い浮かんだ。生音の表現力ってすごい。

 

そして、この視点の移動の描き方はとても映像的であるように思う。

小説大好き人間としては、音楽に関しても歌詞を物語として読んでしまったりするのだが、その目線で見ると違和感がある。前半も後半も明らかに同一人物の一人称視点のはずなのに、”この雨を見下ろす星になれたら”と歌う後半の視点は幽体離脱のように、ベランダで外を眺めていた人物の身体を離れて宙にあるからだ。

しかし、映像として捉えると「カメラを引く」という動きが自然と見えてくるのでぱちりとハマるのが面白い。

 

8. いつものこと

何故自分で命を捨てちゃいけないって皆言うんだろう

黙っていても奪われるだけなのにって僕は思うよ

だからどうって訳じゃない そう思っていたいだけだよ

それだけでさ歩けるんだよ 僕はそうなの

はじめて聴いたとき、この歌詞に撃ち抜かれた。

「死ぬ気になれば何でもできる」なんて安易な言葉は大嫌いだが、その選択肢を持っていることを思うだけで歩いていけるというのが解りすぎて、自分の心の中にあったものをすぱっと言語化された心地良さと、自分だけではないんだという安堵感があった。

 


LAMP IN TERREN - いつものこと (Official Music Video)

ステージの上に立つ人間として、特別な存在でいなければならないと思っていた。だから、自分の平凡でしかない日常を歌にするのがずっと怖かった、とMCで大さんは言った。

いちリスナーとしては、前作の「BABY STEP」とこの曲で、大さんのことをとても身近に感じられるようになったと思う。

 

クリエイターではないから、その産みの苦しみは想像することしかできないけれど、目に見えた成果が表れず、無為に感じる日々の積み重ねがあるのだろうなと思う。

ああ今日も何もできなかったなというその感覚は、矮小な例えかもしれないが、前日まではあれをしようこれをしようと考えていたのに、ぼんやりと寝そべったまま過ごしてしまった休日に感じる虚しさに、もしかしたら少し似ているのかもしれない。

 

そんな無意味で無為かもしれない時間もたしかに自分の日常で、それを”ね、綺麗でしょう”という歌詞で締めるところが素敵。Bloomの公演のとき、このフレーズをリフレインするのがものすごく良かったのを覚えている。

 

9. ホワイトライクミー

生きる意味なんて物に囚われてしまわぬように

目の前にあるものと手を繋げますように

出だしのギターに妙な中毒性があって、たまに頭の中でループしはじめる曲。

サビまでの溜めが長めなので、サビに辿り着いたときの解放感が気持ちいい。


LAMP IN TERREN - ホワイトライクミー (Official Music Video)

改めて歌詞カードを読んでいると夜空の藍色のイメージなのだが、いざ音楽を聴くと、タイトル通り、発光して色が飛んだ白の印象になるのが不思議。

 

生きている意味を考えはじめると、どこまでも漠然とした壮大な話に飛び立っていってしまう。そういうことを考えるのが大抵ネガティブになっているときだというのも相俟って、ロクな結論にたどり着くことがない。

生まれてきた意味や生きる意味なんていうのは所与のものとして存在するわけではなくて、だから規模の大きい話からは何も得られない。好きな人、好きなもの、好きなこと、そんな身近にある大切な物事が私たちを生かす。

地に足を付けるってそういうことなのかもなあと思ったりする。

 

10. Fragile

その声で僕は何度でも息を吹き返す

それだけでいいよ 何度も羽ばたける いつも

今作の中でいちばん好き。ドラムのシャープな音が冴えている。

ローテンポかつ音もシンプルなので全体的にダークさが漂う曲なのに、そこから得られる感情は決して暗くはない。

むしろ、深呼吸で肺がふくらむように、胸の裡でゆっくりと力が広がっていくような感触がする。

 

いちばん最初に曲の出だしを聴いたとき、音の雰囲気は前作の「I aroused」を彷彿させた。どちらも暗闇の中から始まるのだが、そこから脳裏に浮かぶ風景は異なる。

「I aroused」で印象に残るのは闇ではなく、その中に滲むぼんやりとした光や”目を覚ました”あとに広がる世界。対して「Fragile」は無重力の中で目を閉じて浮遊しているような感覚で、最後まで暗闇に包まれる、あるいはその中に溶けていく。

また、「I aroused」は自分に、「Fragile」は他者との繋がりに焦点が置かれているのも大きな差異だろう。それを踏まえたうえで、曲のイメージとして、前者が光、後者が闇というのは面白いなと思う。

 

人間はひとりだ。どこまで行ってもひとりのままだ。それでも、例えたった一人で暗闇の中にいても、ひとりとひとりで手を繋ぐことはできる。ひとりのまま、ひとりではなくなるのだ。”異常である事が普通”なこの世界でそれは力になる。

 

…と、ここまで超長文を書き綴ってきたのだが、これを書かなければと思ったのは京都での大さんのMCがあったからだった。

 

ライブの記憶は「楽しかった」以外は消えがちなので、ニュアンスが違うところがあるかもしれないけれど。

このコロナ禍で、音楽をはじめとするエンターテイメントが"不要不急"だと、必要不可欠ではないのだとばっさり切り捨てられたそのことは、私たちが想像していた以上にそれを生業としている人たちを深く傷付けたのだろうことをひしひしと感じた。

出会えてよかったと思ってほしい、もっと必要とされるようになりたい。そんな祈りみたいな言葉に、もう既に十分必要としてるんだよって叫びたかった人は私以外にもいっぱい居たんじゃないだろうか。

こんなにも胸がいっぱいなんだよ!!とかぱっと開いて見せられたらいいけど、そんなことはできないから言葉にしなきゃと思って書いてたらこんな長文になった(さすがに長すぎだろと自分でも思う)。

 

1人で生きていくつもりも、自分たち4人だけで生きていくつもりもない、聴いてくれるあなたたちと一緒に生きていきたい。音源だと遠く感じるかもしれないけど、ここに居る俺を見て覚えていて。今ここに居るこのままの姿で隣にいて歌っていると思ってほしい。

マイクを通さずにそのままの声で話す大さんの言葉がとても嬉しかった。

 

いろんなシチュエーションでテレンの曲に触れてきた。

月曜日の通勤電車の中、ランチタイムの昼寝BGM、仕事で失敗した日の帰路、ライブ後の余韻で口ずさむ月明かりの道。

曲と一緒にいろんな記憶が残っている。多分そのときに何も聴いていなければ忘れてしまっていたような些細なことも覚えている。あの日あのときに救われたことや楽しかったこと、そのときの感情を鮮やかに覚えている。

ライブのほんの一瞬のように消えてしまう時間の煌めきに、大丈夫、これからも生きていける、といつもいつも思う。この瞬間のために働いて生きているんだって躊躇いなく言えてしまう。

それはもう紛れもなく、一緒に生きているってことでしょう。テレンの音楽が無い生活が想像できないくらいに、すでに日常の中に溶け込んでいる。

いつも私の日々を支えてくれて本当にありがとう。これからもどうぞよろしく。

楽しいだけが音楽じゃない / The Naked Blues (LAMP IN TERREN)

※BABY STEP大阪公演のMCや演出に関する記載を一部含みます※

LAMP IN TERRENのライブは今、最高潮に素晴らしいのでみんな一度見てくれ、と心から思う。

昨年Vo.松本大声帯ポリープの手術をするのに伴い数ヶ月活動を休止していたのだけど、活動再開してから生まれ変わったかのように音楽もライブも格段にレベルアップを重ねている。

昨年12月にリリースされたアルバム「The Naked Blues」を引っ提げてのツアー中なので(といっても後はファイナルの東京だけだけど)、本当に一度足を運んでみてほしい。

このアルバムについて「ありのままの素裸」だと大さんは言った。
これまでは理想の自分、いわば本来の自分ではないものになろうとしてきたけど、そうではなくて、そのままの自分をさらけ出したのだと。
日記のような手紙のようなとも言っていた通り、真っ直ぐな彼自身がそこにいる。

これまでのアルバムも十分に良いし大好きなのだけど、今回のアルバムはずば抜けて最高です。
…ということで、このアルバム全12曲について語ります。
(引用の歌詞は好きなフレーズで、必ずしもサビではないです)


LAMP IN TERREN 4th Album「The Naked Blues」全曲Trailer -2018.12.5 Release-

なんと、ライブ1本分まるまるYoutubeに上がってます!! なんて太っ腹!!

LAMP IN TERREN - Tour BABY STEP (Live at LIQUIDROOM ebisu)

1. I aroused

眠るように私は目を覚ます あるがままで光る

夜道を歩くときに聴くのが個人的にはベストな曲。
自分の内側にふっと潜り込んだ先に世界が拓けている絵が浮かぶ。
煌々とした光ではなく、暗闇の中にぼんやりと滲む光に希望を見るような。

私たちは周りの人の目とか言葉とかいろんなものに影響を受ける。ある意味では惑わされると言ってもいいかもしれない。
そういうときに原点に立ち返るというか、もう一度自分自身の声に耳を傾ける。自分自分の望みを知る。そんなイメージ。


2. New Clothes

俺は恥ずべき裸の王様 そして新しく袖を通す
他の誰でもない俺が 選ぶ 歪な正しさに

1曲めからの音の繋ぎが最高に格好良い。
好きなMV、花と詩人と並んでツートップです。
エレベーターのドアがひらいて光が射し込んで曲名がぱーんと出てくるあのシーンは素敵すぎでしょ。

LAMP IN TERREN「New Clothes」Music Video

周りの期待に応えようと理想という名の鎧を身に纏って、本来の自分と理想との間に引き裂かれて。
痛々しいその姿が自分にも重なるからこそ、上に引用した歌詞がラストに来たときにカタルシスを得るのだと思う。


3. オーバーフロー

もういっそフルボリュームで叫ぶよ 君に愛されたい!

ライブでシンガロングするのがとても嬉しい曲。
真っ直ぐな歌詞ばかりのこのアルバムの中でもいちばんど直球。

LAMP IN TERREN - オーバーフロー (Live at 日比谷野外大音楽堂)

これはさらけ出したなあ!!って思った。
愛されたい、うん、そうだ。多分私もまた愛されたいとどこかで思ってる。
だから愛されたいと叫ぶあなたを眩しく思うし、愛したいし愛している。

2月のSEARCHのとき、大さんが「嬉しくて笑っちゃうわ」と思わず零れた感じの笑みで言った瞬間、幸福としか表現できない気持ちになった。


4. BABY STEP

僕が僕を好きになった瞬間から
世界は全ては変わっていくのだから
僕が僕として生きることこそが偉大な一歩目だから

ツアータイトルにもなっているリード曲。
最初に聴いたのは弾き語りだったのだけど、この歌詞で泣いた。

LAMP IN TERREN「BABY STEP」Music Video -4th Album「The Naked Blues」2018.12.5 Release-

そのときのMCで「真実よりも理想の方がきれいだと思う。それでもありのままの自分でいたい」というような話をしていたのがめちゃめちゃに胸に刺さって、その上でのこの曲だったからそりゃあ泣きます。

他人と自分を比べては何もかもが劣っているように感じて、ありのままの自分では足りないと否定して、周囲が期待される姿を演じてはそれが受け入れられる度に「求められているのは演じている自分の方なのだ」と負のスパイラルに陥っていく。自分でも自分が解らなくなっていく。
ああ、これは私だって思った。

自分自身を受け入れること、とりわけ駄目な自分や弱い自分を受け入れることは難しい。
だからこそそれは世界を変えてしまう程の偉大な一歩となるのだ。

ツアーのMCの言葉が忘れられない。この曲と共に、何度も思い出してはこれからの私を支えていくのだろう。
「自分のしていることを愛してあげてください、自分のことを愛してあげてください」
「駄目でも、駄目じゃないから」


5. 花と詩人

いずれ枯れるとしても 時計の針を戻しはしないよ
君のいない日々はもう僕じゃないから

MVが非常に素敵です。単純に映像としても美しいし物語性がある。
大さんディレクションと知り、そんなところにも才能が…と感嘆するなど。


LAMP IN TERREN「花と詩人」Music Video

歌詞だけを読むと恋愛をテーマにしたものに見えるけど、MVを観るとそこに描かれているのは音楽への愛なのだなあと感じる。
「愛している」なんていう陳腐な言葉でしか表せないのを歯痒く思う程の深い想い。


6. 凡人ダグ

あー何もないなら 踊るか もう
別にやりたいこともないしな 全部面倒くせぇや
あぁ どうぞ 笑ってくださいな

地球儀と並んで、通勤のときによく聴く曲ランキング1位。
テイストとしては全く対極にあるのが面白いところ。

LAMP IN TERREN - 凡人ダグ (Live at LIQUIDROOM ebisu)


水脈を掘り当てようと必死に地面にシャベルを突き立て、それでも掘り当てることはない。
自分にはもう何もないんだと自嘲しながらも、そのうち見返してやるからなとハッタリでも言ってのける、いっそ自暴自棄なくらいの感じがとても好き。

アルバムに付いてるDVDのインタビューで、これは自分を描いているのではないと大さんが言っていたのがかなり意外だった。完全にそうだと思ってたので。


7. 亡霊と影

どうか弱い僕にも 生きる意味がありますように

手術のことを書いた曲なんだなとすぐに分かった。
この曲の根底にあるのはおそらく喪失感。
これまでが全部夢だったように思える程の一瞬で、違う自分になっている。
怖かっただろうなあ。でももっと良い状態になってパワーアップして戻ってきてくれた。本当に良かった。

ちなみにこれ、ライブで聴くとベースが音源よりも更に格好良いです。


8. Dreams

それが夢だと知って 僕らは嵐に飛び込んでいく
今も輝いて 心を呼ぶ光の方へ

応援ソングというオファーだったけど、自分で自分の背中を押すような曲になったとのインタビュー。仕事でちょっと気合い入れなきゃいけない朝、私もまた背中を押してもらっている。

夢は遠くのキラキラとしたものとして置いておく分にはただただ綺麗な存在だけど、実際に近付いていこうとするとそこにあるのは茨の道。
それでもその先にある光に向かっていく姿がきらめきを発する。


9. Beautiful

消えると知っていて 命を放つ
暗闇を裂いて また次ぐ闇へ

個人的にはいちばんライブで化けた曲だった。
ハンドマイクで歌にも振りにも感情が思い切り込められていて息を飲んだ。
大抵のバンドでボーカルが作詞しているのはきっと、作詞者にしか出せない表現の深さがあるからなんだろうなと思わされる凄み。

一瞬だけ輝きを放って消えていく雷と、自身を重ね合わせた歌詞。
強さと儚さは両極端のようでいて表裏一体なのかもしれない。


10. おまじない

着飾っていても全ては
僕らしくあるため使う まじない

不意に気付いたら口ずさんでいる率の高い曲。
「おまじない」という言葉のチョイスがかわいい。

おまじないを唱えることは、自分の願いを言葉にすること。
こうなりたい、こうなってほしい、何を望むのかを形にすること。


11. Water Lily

寂しさはきっと愛しいもの
繰り返しながら埋めていくよ

これもまたMVが良いのです。

LAMP IN TERREN「Water Lily」Music Video

孤独を感じるのは一人ではないから。だからその寂しささえも誰かとの繋がりの証で愛しい。
そんなこと考えたこともなかったけど、言われてみればそうかもしれない。


12. 月のこどもたち

ひとりのままじゃ輝けない
僕はお日様じゃないの わかるから
だけどね 光るよ 君がいれば いつまでも

ツアーでこの歌詞を背を向けて光を見上げて歌う場面が照明の演出すごく良かった。

自分で光れなくても、月のように光を受けてそれを誰かに手渡すことはできる。
私たちはきっとそんな風に光を乱反射して互いを支えあっている。

いつもライブで、隣にいるみたいな気持ちでいる、支えになれたらいいと思ってる、と言ってくれる。この曲はその言葉を音楽にしたみたいな感じ。「想われている」という感触がする。


自分でも驚くほど長々と書いてしまったわけだけど、とにかく聴いてほしい!!という一心です。ファンが推さなくて誰が推すのだという一念。

以前、わーっと盛り上がって楽しいだけが音楽の楽しさではない、日々の苦しさや憂鬱を取り払ってくれることもまた音楽の楽しさなんだと言っていて、それこそがLAMP IN TERRENの良さだと思った。

暗い気持ちのときに無理にテンションを上げに来るのじゃなくて、憂鬱に寄り添ってほんの少しだけ手を引いて前に進む力をくれる、そういう音楽を必要としている人は私以外にも居るはずで、その人たちに届いてほしいと思う。

彼らが私を支えてくれる分、私も彼らを支えたいなー何が出来るかなーと思って、思いの丈をありったけ書いてみました。

youtubeで聴いてみて良いなと思われたら是非CDご購入を!!
製作についてのインタビューが付いた初回盤がおすすめです。

ちょっと初回盤は高いな…という方はCDのみのこちらを。

死にたいわたしを救うのもまたわたし / 爽やかな逃走 (CIVILIAN)

 9/1に子どもの自殺が増えるということで、

夏休みの最終日、NHKで特集番組をやっていたらしい。

その中で、わたしを救った音楽というテーマで何曲か取り上げられていたようだ。

 

大好きなバンド、Lyu:Lyu(現:CIVILIAN)の曲も上がっていたようで嬉しい。

その曲「ディストーテッド・アガペー」も大好きな曲のひとつなのだけど、

わたしの中でLyu:Lyu/CIVILIANの救われる曲No.1は「爽やかな逃走」。

 

行きたくないところへ、それでも行かなくちゃと苦しむ人のための曲。

歌詞がどこもかしこも共感できすぎて、引用しはじめたら止まらないのでやめる。

行かなくちゃと思ってるのに、身体が拒否してどうしようもない感じとか、

ここまでがんばる意味ってなんなんだろうって思ったりとか、

吐きそうなくらい理解できてしまう。

 

ライブでは終盤のこの歌詞にいっつも泣かされる。

いつの間に言えなくなったの 「嫌だ」とか「やりたくない」とか

誰に習ったの 我慢しなさいって

君の中で首を吊ろうとしている君を

君だけが止められるんだ

 

その渦中にいるときは「行かない」という選択肢は重大なもののようなんだけど、

死にそうな思いをしてまで耐えるようなことはないんだと最近は思う。

経験上、他人からすれば「逃げた」と言われるようなことを何度かやって、

それでもまあ生きていけるなって分かったから言えることだけど。

 

逃げるというのは簡単なことではなくて、

いろんな心理的な葛藤を乗り越えてようやくできること。

惰性と妥協と我慢で生きてるよりよっぽど行動的でいいと思うのです。

 

Amazonでたった¥270ぽっちでポチれるので、

試聴して声質が好みでないとかでなければ是非!!

寄り添う、その一歩先へ / CIVILIAN

昨日のCIVILIANの改名1周年ライブ。

 

Lyu:LyuからCIVILIANになったことを体感させられたライブだった。

セトリの組立ても、Lyu:Lyu時代のものは中盤のアコースティックとアンコールのみ。

たった1年で、CIVILIANとしての楽曲だけでライブができるバンドになっていた。

 

そして「生者ノ行進」は大きなターニングポイントだったのかもしれない。

客席に呼び掛けて一緒に歌う、というスタイルはLyu:Lyuには似合わなかった。

あの演者と客席の一体感はCIVILIANだからこそ生み出せたもの。

 

鬱ロックと言われることもある彼らがメジャーデビューし、

これまでとは違う新たな一面を開花させていく姿に、

ファンはそれだけで力をもらえる。

 

以前、彼らのことを「生きづらさに寄り添う音楽」として記事を書いた。

 

atamanonaka.hateblo.jp

今、彼らは「寄り添う」の先を行こうとしている。

 

「頼りない足でも僕等は歩けるさ ほら一緒に歌おうぜ」(生者ノ行進)

 

一緒に、進もうと言ってくれる。

自分も同じように傷ついているよと寄り添うだけではなく、

それでも一緒に行こうぜと背中を押してくれる。

 

これまでの歌詞に多かった 救う/救われる という二元的な関係性。

でも本当は、あなたが私を救うのと同じくらい、あなたも私に救われているのだ。

だからほら、一緒に行こうぜ、っていうことかなーと思ったりする。

 

CIVILIANになってからの楽曲は前向きすぎる、と言っている古参ファンが多くて、

その気持ちは分からないでもなくて、でも言いたい。

彼らは何もポジティブ一辺倒になったわけじゃないんだよ。

Lyu:Lyuのときの、あの痛みを分かり合える感じをそのままに、

それでも手を取って一緒に行こうぜ、って言ってくれてるだけなんだよ。

痛みを分かち合った、その向こう側に。

 

「生者ノ行進」と、8月リリースの「顔」。

「顔」のMVはとにかく篠原ともえが良いっす!

 

 

 

そして、まだまだ売れてるとは言い難いバンドなので、

気になった方は、ぜひぜひCD購入で応援してください!

 

毒にも似た歌詞の鮮烈 /スガシカオ

本音と建前なんて言うけれど、

「思ってても言っちゃいけないでしょ、それ」な本音を

グロテスクではなく爽快に表現するのがスガシカオの魅力。

 

最新アルバム「THE LAST」に収められている

「あなたひとりだけ幸せになることは許されないのよ」は

タイトルからしてもう、その真髄がだだ漏れている。

 

誰もが経験のある後ろ暗い欲望や感情。

持っていない振りをしたくなる、そんなカタマリたちを、

何でもないことのように彼は歌う。

 

自分だけではないということの救い、などと言うと陳腐だけれど、

真っ白にキレイで真っ当な人間じゃないのは、何も自分だけじゃないのだと、

どこか許されたような気持ちになる。

 

そうした影の部分を鮮やかに切り取ってみせる一方で、

NHK「プロフェッショナル」のテーマ曲である「Progress」のような

メッセージソングを書き上げるという才能の振れ幅もまた、

スガシカオにハマる一因だったりするのだ。

 

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「アルバム視聴会」と題されたライブから約1年が経ったけれど、

耳を傾けるたびに、何度でも視聴会のときの衝撃を思い出す。

デビュー20周年を迎えてなお、エッジの効いた彼の最新作です。

生きづらさに寄り添う音楽 /Lyu:Lyu(CIVILIAN)

しんどくて、大好きな本を開く気力すらないとき、

いつも音楽に助けられてきた。

 

つらいときに聴くのは、前向きなメッセージ性の強い音楽よりも、

作り手も自分と同じように苦しんでいることが感じられる、

人によっては「ネガティブ」と言われるだろう曲たちがいい。

Lyu:Lyu(11月にCIVILIANとしてメジャーデビュー)は、

間違いなくそういうときに聴くべきバンドだ。

 

「他者と関わりたいけどうまく関われない、だから関わりたくない、でも…」

みたいな矛盾感を抱えているひとは、共感性が高いんじゃないかと思う。

私の語彙力ではうまく説明しきれないのがもどかしい。

下にYoutubeのリンクを貼っているので、とりあえず1曲聴いてみてほしい。

彼らの曲は、もしかしたらあなたを救う曲になる。

私にとって、そうであったように。

 

Youtubeにアップされていない曲もいっぱいあるので、

ちょっとでも琴線に触れた人がいらっしゃれば、アルバムも是非。