楽しいだけが音楽じゃない / The Naked Blues (LAMP IN TERREN)

※BABY STEP大阪公演のMCや演出に関する記載を一部含みます※

LAMP IN TERRENのライブは今、最高潮に素晴らしいのでみんな一度見てくれ、と心から思う。

昨年Vo.松本大声帯ポリープの手術をするのに伴い数ヶ月活動を休止していたのだけど、活動再開してから生まれ変わったかのように音楽もライブも格段にレベルアップを重ねている。

昨年12月にリリースされたアルバム「The Naked Blues」を引っ提げてのツアー中なので(といっても後はファイナルの東京だけだけど)、本当に一度足を運んでみてほしい。

このアルバムについて「ありのままの素裸」だと大さんは言った。
これまでは理想の自分、いわば本来の自分ではないものになろうとしてきたけど、そうではなくて、そのままの自分をさらけ出したのだと。
日記のような手紙のようなとも言っていた通り、真っ直ぐな彼自身がそこにいる。

これまでのアルバムも十分に良いし大好きなのだけど、今回のアルバムはずば抜けて最高です。
…ということで、このアルバム全12曲について語ります。
(引用の歌詞は好きなフレーズで、必ずしもサビではないです)


LAMP IN TERREN 4th Album「The Naked Blues」全曲Trailer -2018.12.5 Release-

なんと、ライブ1本分まるまるYoutubeに上がってます!! なんて太っ腹!!

LAMP IN TERREN - Tour BABY STEP (Live at LIQUIDROOM ebisu)

1. I aroused

眠るように私は目を覚ます あるがままで光る

夜道を歩くときに聴くのが個人的にはベストな曲。
自分の内側にふっと潜り込んだ先に世界が拓けている絵が浮かぶ。
煌々とした光ではなく、暗闇の中にぼんやりと滲む光に希望を見るような。

私たちは周りの人の目とか言葉とかいろんなものに影響を受ける。ある意味では惑わされると言ってもいいかもしれない。
そういうときに原点に立ち返るというか、もう一度自分自身の声に耳を傾ける。自分自分の望みを知る。そんなイメージ。


2. New Clothes

俺は恥ずべき裸の王様 そして新しく袖を通す
他の誰でもない俺が 選ぶ 歪な正しさに

1曲めからの音の繋ぎが最高に格好良い。
好きなMV、花と詩人と並んでツートップです。
エレベーターのドアがひらいて光が射し込んで曲名がぱーんと出てくるあのシーンは素敵すぎでしょ。

LAMP IN TERREN「New Clothes」Music Video

周りの期待に応えようと理想という名の鎧を身に纏って、本来の自分と理想との間に引き裂かれて。
痛々しいその姿が自分にも重なるからこそ、上に引用した歌詞がラストに来たときにカタルシスを得るのだと思う。


3. オーバーフロー

もういっそフルボリュームで叫ぶよ 君に愛されたい!

ライブでシンガロングするのがとても嬉しい曲。
真っ直ぐな歌詞ばかりのこのアルバムの中でもいちばんど直球。

LAMP IN TERREN - オーバーフロー (Live at 日比谷野外大音楽堂)

これはさらけ出したなあ!!って思った。
愛されたい、うん、そうだ。多分私もまた愛されたいとどこかで思ってる。
だから愛されたいと叫ぶあなたを眩しく思うし、愛したいし愛している。

2月のSEARCHのとき、大さんが「嬉しくて笑っちゃうわ」と思わず零れた感じの笑みで言った瞬間、幸福としか表現できない気持ちになった。


4. BABY STEP

僕が僕を好きになった瞬間から
世界は全ては変わっていくのだから
僕が僕として生きることこそが偉大な一歩目だから

ツアータイトルにもなっているリード曲。
最初に聴いたのは弾き語りだったのだけど、この歌詞で泣いた。

LAMP IN TERREN「BABY STEP」Music Video -4th Album「The Naked Blues」2018.12.5 Release-

そのときのMCで「真実よりも理想の方がきれいだと思う。それでもありのままの自分でいたい」というような話をしていたのがめちゃめちゃに胸に刺さって、その上でのこの曲だったからそりゃあ泣きます。

他人と自分を比べては何もかもが劣っているように感じて、ありのままの自分では足りないと否定して、周囲が期待される姿を演じてはそれが受け入れられる度に「求められているのは演じている自分の方なのだ」と負のスパイラルに陥っていく。自分でも自分が解らなくなっていく。
ああ、これは私だって思った。

自分自身を受け入れること、とりわけ駄目な自分や弱い自分を受け入れることは難しい。
だからこそそれは世界を変えてしまう程の偉大な一歩となるのだ。

ツアーのMCの言葉が忘れられない。この曲と共に、何度も思い出してはこれからの私を支えていくのだろう。
「自分のしていることを愛してあげてください、自分のことを愛してあげてください」
「駄目でも、駄目じゃないから」


5. 花と詩人

いずれ枯れるとしても 時計の針を戻しはしないよ
君のいない日々はもう僕じゃないから

MVが非常に素敵です。単純に映像としても美しいし物語性がある。
大さんディレクションと知り、そんなところにも才能が…と感嘆するなど。


LAMP IN TERREN「花と詩人」Music Video

歌詞だけを読むと恋愛をテーマにしたものに見えるけど、MVを観るとそこに描かれているのは音楽への愛なのだなあと感じる。
「愛している」なんていう陳腐な言葉でしか表せないのを歯痒く思う程の深い想い。


6. 凡人ダグ

あー何もないなら 踊るか もう
別にやりたいこともないしな 全部面倒くせぇや
あぁ どうぞ 笑ってくださいな

地球儀と並んで、通勤のときによく聴く曲ランキング1位。
テイストとしては全く対極にあるのが面白いところ。

LAMP IN TERREN - 凡人ダグ (Live at LIQUIDROOM ebisu)


水脈を掘り当てようと必死に地面にシャベルを突き立て、それでも掘り当てることはない。
自分にはもう何もないんだと自嘲しながらも、そのうち見返してやるからなとハッタリでも言ってのける、いっそ自暴自棄なくらいの感じがとても好き。

アルバムに付いてるDVDのインタビューで、これは自分を描いているのではないと大さんが言っていたのがかなり意外だった。完全にそうだと思ってたので。


7. 亡霊と影

どうか弱い僕にも 生きる意味がありますように

手術のことを書いた曲なんだなとすぐに分かった。
この曲の根底にあるのはおそらく喪失感。
これまでが全部夢だったように思える程の一瞬で、違う自分になっている。
怖かっただろうなあ。でももっと良い状態になってパワーアップして戻ってきてくれた。本当に良かった。

ちなみにこれ、ライブで聴くとベースが音源よりも更に格好良いです。


8. Dreams

それが夢だと知って 僕らは嵐に飛び込んでいく
今も輝いて 心を呼ぶ光の方へ

応援ソングというオファーだったけど、自分で自分の背中を押すような曲になったとのインタビュー。仕事でちょっと気合い入れなきゃいけない朝、私もまた背中を押してもらっている。

夢は遠くのキラキラとしたものとして置いておく分にはただただ綺麗な存在だけど、実際に近付いていこうとするとそこにあるのは茨の道。
それでもその先にある光に向かっていく姿がきらめきを発する。


9. Beautiful

消えると知っていて 命を放つ
暗闇を裂いて また次ぐ闇へ

個人的にはいちばんライブで化けた曲だった。
ハンドマイクで歌にも振りにも感情が思い切り込められていて息を飲んだ。
大抵のバンドでボーカルが作詞しているのはきっと、作詞者にしか出せない表現の深さがあるからなんだろうなと思わされる凄み。

一瞬だけ輝きを放って消えていく雷と、自身を重ね合わせた歌詞。
強さと儚さは両極端のようでいて表裏一体なのかもしれない。


10. おまじない

着飾っていても全ては
僕らしくあるため使う まじない

不意に気付いたら口ずさんでいる率の高い曲。
「おまじない」という言葉のチョイスがかわいい。

おまじないを唱えることは、自分の願いを言葉にすること。
こうなりたい、こうなってほしい、何を望むのかを形にすること。


11. Water Lily

寂しさはきっと愛しいもの
繰り返しながら埋めていくよ

これもまたMVが良いのです。

LAMP IN TERREN「Water Lily」Music Video

孤独を感じるのは一人ではないから。だからその寂しささえも誰かとの繋がりの証で愛しい。
そんなこと考えたこともなかったけど、言われてみればそうかもしれない。


12. 月のこどもたち

ひとりのままじゃ輝けない
僕はお日様じゃないの わかるから
だけどね 光るよ 君がいれば いつまでも

ツアーでこの歌詞を背を向けて光を見上げて歌う場面が照明の演出すごく良かった。

自分で光れなくても、月のように光を受けてそれを誰かに手渡すことはできる。
私たちはきっとそんな風に光を乱反射して互いを支えあっている。

いつもライブで、隣にいるみたいな気持ちでいる、支えになれたらいいと思ってる、と言ってくれる。この曲はその言葉を音楽にしたみたいな感じ。「想われている」という感触がする。


自分でも驚くほど長々と書いてしまったわけだけど、とにかく聴いてほしい!!という一心です。ファンが推さなくて誰が推すのだという一念。

以前、わーっと盛り上がって楽しいだけが音楽の楽しさではない、日々の苦しさや憂鬱を取り払ってくれることもまた音楽の楽しさなんだと言っていて、それこそがLAMP IN TERRENの良さだと思った。

暗い気持ちのときに無理にテンションを上げに来るのじゃなくて、憂鬱に寄り添ってほんの少しだけ手を引いて前に進む力をくれる、そういう音楽を必要としている人は私以外にも居るはずで、その人たちに届いてほしいと思う。

彼らが私を支えてくれる分、私も彼らを支えたいなー何が出来るかなーと思って、思いの丈をありったけ書いてみました。

youtubeで聴いてみて良いなと思われたら是非CDご購入を!!
製作についてのインタビューが付いた初回盤がおすすめです。

ちょっと初回盤は高いな…という方はCDのみのこちらを。