夢から醒めても続いていくこれから / LAMP IN TERREN

2021/12/28、LAMP IN TERRENとして行われる最後のライブ。

 

会場に向かう新幹線の中で、自分の日記代わりになっている昔のツイートを遡って見ていたら、mol-74の武市さんのこんな呟きをリツイートしていた。

ほんとうにこれに尽きる。

 

今回のライブは"A Dream of Dreams"、"夢から醒めた夢"をタイトルに掲げたもの。

わたしは、夢が、奇跡が、ひとつ終わりを迎えるその瞬間に立ち会うために足を運んだのだ。そして、また新たな奇跡を生み出そうと踏み出す彼らの門出を祝福するために。

 

前日の配信で大さんが「しんみりしてほしくない」と言っていたのを聞いてて、そんな無茶な…と思って参加したが、実際しんみりする気持ちよりも満足感の方が圧倒的に大きくて、どうだった?と聞かれたら大声で「楽しかった!!」と手放しで言える。

もちろん淋しさはある。無いわけがない。それでもやっぱり、満たされた気持ちの方が勝るのだ。

 

そういう感想になったのは、セトリの構成が大きく影響したと思う。

手を上げたり手拍子したりして観客が参加しやすい選曲がされているのに加えて、曲を光/闇、白/黒に二分化したとすると、光・白の属性にあたる曲が選ばれているように感じた。人との繋がりとか、前に踏み出すことがテーマの曲たちというか。

単純に盛り上がりという点だけなら、よくライブでやっているほむらの果てとか凡人ダグが入ってもおかしくないような前半の流れだった。でも入っていなかったのは、そういう選び方なのかなと思ったり。

あとは懐古的に昔の曲が多くなったりしていなかったのも一因かもしれない。緑閃光をやらなかったのが「あれは"かつての"代表作だよ」という自信の表れなんだとしたら、ものすごく良いなと思う。最新のものがいちばんの自信作というのは前に進んでいることの証だから。

 

全体としてはそんな感じで、あとは備忘的に雑感を。

状況が状況だからか、過去のことが重なって思い出される瞬間がしばしばあって、これまでにない体験をしたライブでもあった。

 

01.いつものこと

ラストの歌詞を「きっとねいつか未来でまた笑って思い出せる」にアレンジしてたのはほんとにずるいし、「それが僕の全てだった」って過去形になってたのも地味に効いた。あんなのぶっ刺さるに決まってる。

02.地球儀

セトリに入るのは確実だと思ってたけど、2曲めは完全に予想外。ただ、この後の流れを知って振り返ると、この凄まじいテンポで走りだす火付け役はこの曲以外有り得ないなっていう納得感がすごかった。この曲は様々な会場でジャンプしたよね。

03.キャラバン

地球儀で息が上がってるところに投げ込まれて、ボルテージの上がるまま煽る声に合わせて拳を突き上げた。”バンド”がテーマにある曲というイメージがあるので、最後に4人の演奏を聴けてよかった。ラスサビ前の全部の楽器が対等に絡み合う感じが好き。

04.オーバーフロー

こんなご時勢じゃなかったら、全力でシンガロングしたかった!! 観客みんなが全力でステージに向けて手を伸ばした曲なんじゃないかと思う。大きな声を出せない分、全部この手から伝われ、って思ってた。

MC

大喜さんの脱退はびっくりしたけど、その後の「それならLAMP IN TERRENは終了する」という流れには全く違和感がなかった。むしろ、しれっと代わりに新しいドラムが加入して続いた方がショックだったかもしれないとさえ思う。MCのときに顕著に見える、あの長年の友達同士という下地がある関係性がテレンだという感覚だから。公式のインタビューにあった「一番根幹にあったのがメンバーと一緒に過ごしてきた記憶」というのが見てる側にも伝わってたんだと思う。

05.Dreams

多分やるだろうとは予想してたけど、やってくれて心底嬉しくて、前奏を聴いたとき、ぱあっと胸が躍った。近年のしんどかった時期をいちばん共にしてくれた曲だ。何回この曲をリピートして、何回「僕らは嵐に飛び込んでいく 今も輝いて心を呼ぶ光の方へ」の歌詞に救われたか分からない。

06.at (liberty)

予想外だった曲その1。繋ぎでこの曲が来るって分かった瞬間、息が止まりそうになった。めちゃくちゃ好きな曲なのに、片手で収まるくらいの回数しかライブで聴けてなかったので。たしかこの辺りで「未来の方を向いたセトリ」ってそういうことか、と思ったはず。

07.ホワイトライクミー

Bloodツアーのときにこの曲に見た”光”の印象があまりにも鮮烈で、いまだにライブで聴くたびにそのときの発光を追体験している気がする。サビまでの溜めが長めなのがめちゃくちゃ効いてて、一気にさあっと光が拡散していく感じ。

08.New Clothes

何回聴いても毎回新鮮に格好良くてびびる。「今が正しい未来」と言い切る歌詞が大好きで、”正しい道というものがあるのではなく、自分の行動で選んだ道を正しいものにしていく”という元上司にもらった言葉を思い出す。

09.Water Lily

リスナーに向けて歌われている感触が強く感じられて、ライブで聴くたびにどんどん好きになっていった曲のひとつ。間奏のギターが透き通って美しくて聴き惚れる。最後のロングトーンがめちゃくちゃきれいだった。

10.ベランダ

大事に思ってても上手くいかない関係性とかタイミングってあるよな…と切なくなる。これは穿ちすぎかもしれないけど、個人的にはこの日は大喜さんに対しての思いが混じってるように感じた。ラストの高音と地声の切り替えがたまらなく好き。

MC

大喜さんが挨拶で、メンバーに出会い、メジャーデビューし、大舞台に立っていることを「有り得ないこと」だと言っていて、冒頭に書いていたバンドというものの奇跡の話だなあと思っていた。彼らが出会って、バンドを組んで、曲をリリースして、一方でリスナーがその音楽に出会って好きになって、たまたま同時代に生きていて、そのライブに来ているって、改めて考えてみるとすごい巡り合わせだ。

湿っぽいのはいやだから、と普段と変わらないようなやり取りをしていたけど、「お前やっぱ俺とバンドやっといた方がいいんじゃないの?」という冗談交じりの言葉に、それでも一滴の本音が混じっている気がして、ぐ、ってなったし、その後の「ばかっっ!」って叫びも、そんなので入るBABY STEPある??って笑いつつも、胸が詰まった。

11.BABY STEP

ドラムを中心に陣形を描いて曲に入るあの後ろ姿が好きだ。同期の淡い色の音が広がってからの、だん、と音の束が身体にぶつかってくる入りの力強さが好きだ。扉をひらくような開放感のある最後のコーラスの伸びが好きだ。言わずもがな歌詞が最高だ。この曲に出会えたことが自分のターニングポイントだった感ある。

12.林檎の理

予想外だった曲その2。これもほんとうに嬉しかった。テレンに最初に会ったのが”LIFE PROBE"だったから、その収録曲たちには特に思い入れがある。セトリの常連という感じではないからこそ、イントロで分かった瞬間の高鳴りが毎回やばい。意外と地球儀に次いで会場を湧かせる曲。

13.宇宙船六畳間号

やわらかく青い照明とゆったりしたテンポが相俟って、あれ、この曲ってこんなにもやさしくて美しかったっけ…?とぼんやり思いながら浮遊感に包まれた。語りかけられてる感が心地良い。「そう僕と君とで全てなんだ」の歌詞のときの大さんの表情、好きだった。

14.pellucid

曲名どおりに透明で澄んだ、テレンの中でいちばん繊細な手触りがする曲。なんとなく、しん、と冷えた空気が清浄な冬のイメージがある。いくら大切な人でも分かり合えないことの寂しさと、分かり合えないからこそ”分かりたい”と触れようとする温もり、その両方を感じる。

15.おなじない

バンドバージョン、ドラムが飛び跳ねてる感じで曲の可愛さが増してて好き。お気に入りの靴を履いたときの、どこまでも歩いていける心躍るような雰囲気。「僕は君と出会った 同じように見付けてくれた 君と未来に出会うために」の歌詞、この日に聴くと特別な意味を持って感じられた。

MC

終わりを意識してしまうからアンコールは無し、LAMP IN TERRENとしては確かに最後かもしれないけど、自分たちの人生は続いていくからそれを優先したい、と。

振り返ると、アンコール無しなのが残念に感じないくらい、ラスト3曲でストーリーが出来てて、きれいな締め方だった。

16.EYE

「見つめるべきはきっと僕じゃなくていい」の歌詞でぐっと伸ばされた大さんの腕が印象的だった。これも出来ればシンガロングしたかった。あの最後の声が重なり合うところ、ライブハウスでみんなで歌えたらすごいことになるんだろうなあ。いつかそんな日が来ればいいな。

17.I aroused

予想外だった曲その3。ここも、来た、と思った瞬間にテンションが上がると同時に、納得感が押し寄せてきた。この曲のイメージは、目を開いた先に未開拓な世界が果てしなく広がっている絵で、それがこのタイミングで演奏されることのエモさ。後々考えてみれば「目を覚ます」というフレーズが入っていて、まるで今回のライブタイトルに合うように作られた曲のようだと感じるくらいだ。

18.ニューワールド・ガイダンス

絶対ラストはこれしかないと思ってた。照明がばちばちに攻めてて、演出すげえ、ってなった。「それだけで僕は笑える 生きてゆける」という小さな歌詞変更がめちゃめちゃに刺さって、気付けば頭の中でリピート再生されている。

 

あとは思い出語りで、テレンとの個人的な転機を3つ。どれが欠けても、こんな長文を書くほどまでに好きにならなかったかもしれないと思うと、すべては巡りあわせだ。

2016年夏、Talking Rock Fesでテレンに出会った。メイとボイドが空に伸びていくように響いていたのを覚えている。好きだ、と思ってすぐに”LIFE PROBE”を手に入れて、繰り返し繰り返し聴いた。ただ、当時は他に推しバンドが居たこともあって、あくまで”きちんと追ってはいないけど好きなバンドのひとつ”くらいの立ち位置だった。

2018年春、活動休止の発表を見た。一度もワンマンに行かないまま、もし万が一復帰しないなんてことになったらいやだ、という思いで向かったMARCHツアーで”New Clothes”の虜になった。歌詞に心臓を的確に深く射抜かれたのに加えて、音楽がめちゃくちゃに格好良かった。復活したらちゃんと追おうと心に決めた。

2019年秋、Bloodツアー@京都。小さいキャパの会場で、なおかつ最前というこの上ない好条件でライブを体験する。聴覚だけで感じるのではなく、空間そのものに吞み込まれるような初めての感覚。この日で人生が変わったと言っても過言ではなくて、ぱあんと目の前がひらけたような気がしたのだ。「自分は自分のために生きていく」のだと降ってくるように理解した。あれから、とても息がしやすくなったように思う。

 

「望むまま。一度きりしかない人生だから、悔いの残らないよう楽しんで生きていこう」。

LAMP IN TERRENとして最後のステージに残された言葉はそのまま、私がテレンと出会って手に入れた生きていく指針そのものだった。

これまでと同じように、きっとこれからもテレンの音楽と一緒に歩いていく。「また会えるよ」というその言葉を信じて、いつかまた”Enchanté”する日を待っている。